技術

ファイバアレイ用キャピラリー(Capillaries for Fiber Arrays)

2-1.ファイバアレイ

Fig.2-1 Fiber array assembling

Fig.2-2 An example of fiber array

Fig.2-3 Typical example of 1x8 splitter bonded by fiber arrays

Fig.2-4 FTTH (Fiber To The Home) 

ファイバアレイとは、光導波路(Optical Waveguide)と光ファイバ(Optical Fiber)を接続する部品です。これまで最も多く使用されてきたのはFig. 2-1に示すようなV溝(V-Groove)を使用したものでした。厚さ数mm程度のガラス板に機械加工やウエットエッチングによって±1μの精度でV溝を形成し、そのV溝に光ファイバを整列させて蓋をし、接着剤で固定した後端面を光学研磨したものです(Fig.2-2)。

光導波路には石英ガラス光導波路(PLC: Planar Lightwave Circuit)とシリコンフォトニクス光導波路(Silicon Photonics Waveguide)導波路、あるいはニオブ酸リチウム光導波路(Lithium Niobite Waveguide)など各種の物があります。導波路の種類や導波路の本数、またはそのパターンの複雑さによらず、いずれも光導波路は外部の部品・装置と光ファイバを通して入出力しなければなりません。

導波路は半導体リソグラフィー技術に類似の方法で作製されていますので、たとえ導波路が8本、32本、48本、など複数本あってもその並びはサブミクロンの寸法精度で制御されています。従ってこれに結合させる光ファイバもサブμの精度で整列させる必要があります。このためファイバアレイが用いられます(Fig. 2-3)。

現在ファイバアレイと接続した光導波路は、FTTH(Fiber To The Home)(Fig. 14)における1x8スプリッタやDWDM(Dense Wavelength Divisions and Multiplexing)におけるAWG(Arrayed Waveguide Grating)などが代表的です。

2-2.V溝型ファイバアレイの問題点

V溝型ファイバアレイはすでに多くの光通信やデータセンタ内の配線などに使用されていますが以下の問題点もあります。

  1. 小型化に限界がある。

  2. 二次元化が困難

  3. 偏波保持ファイバに対しては消光比が劣化する

現在、光通信装置は小型化、高集積化、省エネルギ化が最大の課題となっています。光通信装置で使用されるファイバアレイに対しても例外ではなくその小型化がますます要求されています。

V溝型ファイバアレイは接着剤でV溝、蓋、光ファイバを固めたものです。このためファイバアレイを小型化しようとすればどうしても接着剤で固定する面積が小さくなり、蓋がはがれる確率が高くなります。これは即、通信の切断にもつながりますので信頼性確保の点で非常に深刻な問題を引き起こします。

また小型化に伴い組立の難易度が高くなり経済的にも課題が出てきます。

さらに、近年は波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch)、マルチキャストスイッチ(Multicast Switch)などにおいて空間的な光結合も多用されるようになってきました。空間的な光結合( Spatial Optical Coupling)においてファイバアレイも二次元化が要求される場合もあります。V溝型ファイバアレイでは、それらを積層しても積層方向での精度は全く出ず実用的ではありません。

最近では偏波保持ファイバのアレイ化も必要性が増してきています。V溝型では偏波保持ファイバをV溝の両サイド2点とリッドの接触箇所1点、計3か所で押さえて固定するため偏波保持ファイバに不均一な応力が付加され消光比(Extinction Ratio)が悪くなる欠点もあります。

2-3.キャピラリー型ファイバアレイ

キャピラリー型ファイバアレイは、キャピラリーの穴にファイバを挿入して接着剤で固定し端面を研磨したものです(Fig.2-5)。キャピラリーの穴の直径は±1μで高精度に制御されており、またファイバコアの間隔(pitch)も±1μ以内に高精度制御されています(Fig.2-6)。ファイバ挿入穴はファイバを挿入しやすいようにテーパ状に加工されています。

Fig.2-5. Assembly of capillary fiber arrays.

Fig.2-6. Cross-section of a two-channel capillary

部材はキャピラリーのみでありリッドで固定していないため原理的に剥がれの問題は発生しません。また偏波保持ファイバは円形の穴に挿入されているため周辺部からの応力は均一であり消光比が悪化することは有りません。1芯や2芯のキャピラリー型ファイバアレイはすでに多くの通信部品に使用されており、特に2芯は最新のデジタルコヒーレントシステム(Digital Coherent System)におけるマイクロICR (Micro Integrated Coherent Receiver)用の小型高信頼ファイバアレイとして多く用いられています(Fig.2-6)。(株)中原光電子研究所ではすでに量産ベースでこの種キャピラリーを製造販売しています。

そのほか、各種ピッチのキャピラリー、多数穴のキャピラリー、二次元型のキャピラリー等も実現可能になっています(Fig. 2-7)。これらのファイバアレイは今後の光通信やデータセンタ内配線、シリコンフォトニクスなどへの応用が期待されています。

特にキャピラリー型ファイバアレイは、接着剤層が薄いため光ファイバに付与される応力が小さく、対称的に均一に付与されるため偏波ファイバのE/R特性がV溝型ファイバアレイに比較して優れている特徴があります。さらに、キャピラリー型ファイバアレイはハンダリフロー工程中での光学特性の変化・劣化が少なくシリコンフォトニクス用の光入出力部品として極めて優れていると言えます。(株)中原光電子研究所では中央部に偏波保持ファイバ、左右に単一モードファイバを挿入した3芯のファイバアレイも試作しています(Fig2-7-d)。

(a)

(b)

(c)

(d)

Fig.2-7 Capillaries (a) 3-channel, (b) 4-channel, (c) 2-channel, (d) 3ch-fiber array

シリコンフォトニクス用には、モードフィールド(MFD)変換機能付きのファイバアレイも実現できています。通常のシングルモードファイバのMFD=10μmをシリコン導波路のMFDに近い値の3.5μmにキャピラリーの内部で変換し小型化・高信頼化を図っています。Figure2-8には、MFD=10μmとMFD=3.5μmの3芯のファイバアレイを比較して示しました。これらの3芯のキャピラリー型ファイバアレイの各コア間スペースは±0.5μm以内に高精度制御されています。一般にMFDが3.5μmのHigh NAのPANDAファイバの外径は±2μm程度変動しています。キャピラリー型のファイバアレイはこの変動を吸収する事が可能であり、シリコンフォトニクス用ファイバアレイとして極めて優れたものと言えます。

Fig.2-8 Comparison of MFDs of capillary type fiber array facets
(Upper: MFD=3.5μm, Lower: MFD=10μm)

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なお、(株)中原光電子研究所の2芯キャピラリー型ファイバアレイは経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業で開発されました。

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