技術

集積型GRINレンズ(Integrated GRIN Lenses)

3-1.GRINレンズとは

Fig.3-1 Refractive index change as a function of dopant concentration in silica glasses.

Fig.3-2 Refractive index profile of Ge-doped silica glass.

GRINレンズとはGRaded INdex レンズの略称で、中心軸から周辺部に向かって放物線状に屈折率が低くなっている円筒形のガラスです。両端面が平面ですがレンズ作用があり平行光ビーム形成、レーザダイオードのビームシェイパー、内視鏡、光学スキャナーなど様々な分野に応用されています。

GRINレンズの原理そのものの歴史は古く、1964年に西澤潤一氏と佐々木市右衛門氏によって発明され、その後光ファイバ通信ではマルチモードのGraded Indexファイバ(GIファイバ)として高速な光通信に使用されました。

GRINレンズの材料は多成分系ガラスにLiイオン、Agイオンなどを拡散して屈折率分布を形成したものと、石英ガラスにGeやTiなどをドープしてGraded Indexにしたものがあります。

Figure3-1は石英ガラス中にGe、Tiなどの元素が含有された時の屈折率を示しています。横軸は元素の含有量で縦軸は石英ガラスの屈折率です。Ge、Ti、Alは石英ガラスの屈折率を高くし、B、Fは低くします。

石英ガラス系のGRINレンズには一般にGeが使用されます。Tiは少量でも屈折率を高くする効果がありますが光吸収が生じ易く、Alはガラスの結晶化を引き起こすためGeの方が望ましいとされています。

Figure3-2は、円筒形石英ガラスの中心部にGeを多く含むようにして周辺部に行くに従ってGe含有量を徐々に減少させたGRINレンズの屈折率分布です。Geの含有量と石英ガラスの屈折率は直接に対応しており、その分布を動径方向での距離の二乗にすることでレンズ作用を持たせることができます。

今、光軸(GRINレンズの中心)から動径方向にrだけ離れた箇所の屈折率をn(r)とし、レンズ中心の屈折率をn(0)とすれば、n(r)は(1)式で近似されます。

n(r)2=n(0)2[1-(gr)2 + h4(gr)4 + h6(gr)6 +・・・・・]  (1)

ここでgはg値と呼ばれ焦点距離を決める2次の係数(単位:mm-1)、h4、h6は収差に関係する高次の係数です。

光軸(レンズ中心部)に近いところを伝搬する光線の場合には実用的には二次の項までを考えれば十分です。この場合、g値は式(2)で与えられます。

g=(1/r)*[1- (n(r)2/n(0)2]1/2              (2)

GRINレンズ内を進行する光を示したのがFig.3-3です。

Figure3-3に示すように光はGRINレンズ内を蛇行しながら周期的に進行します。その周期をPとすれば、P=2π/gとなります。レンズ中心部に点光源として入射した光は1/4Pと3/4Pの箇所では平行ビームとなり、2/4P(倒立)と4/4P(正立)では焦点を結びます。

Fig.3-3 Ray trace in a graded index (GRIN) lens.

3-2.集積型GRIN (Integrated GRIN Lenses)レンズとは

Fig.3-4 Photo of 4-channel Integrated GRIN lens (i-GRIN®)

(株)中原光電子研究所では、石英ガラス製のGRINレンズを複数個整列させその外側を純粋な石英ガラスで覆った構造の集積型GRINレンズを実現しました(Fig. 3-4)。外側の石英ガラスとGRINレンズは溶着(melt and attach)されています。また、従来のGRINレンズアレイのように1本1本GRINレンズを整列させるアセンブル工程が無いため小型高集積化に適しています。またこの集積型GRINレンズは非常に精度が高く、各GRINレンズの間隔(Pitch)誤差は±1μ以下が可能です。

さらに1次元に整列させたGRINレンズのみでなく2次元に整列させたGRINレンズも開発中です。

この集積型GRINレンズ(i-GRIN®)は全石英ガラス製であるため以下の優れた特徴を持っています。

  1. 水、温度、薬品に耐性があり、信頼性に優れています。

  2. 紫外から近赤外までの広い波長範囲で透明です。

  3. 1,000℃近くまで使用可能であり、高温での光学特性、熱的特性にも優れたレンズです。

3-3.集積型GRINレンズの応用

3-3-1.コリメート光形成集積型GRINレンズ

Fig.3-5 Ray trace of collimated light(ZEMAX)

Fig.3-6 4-channel collimated beams

Fig.3-7 Intensity profile of Gaussian beam.

Fig.3-8 Gaussian beam propagation.

(a) z=0

(b) z=+3.2mm(レンズ直径:290μm)

Fig.3-9 Observations of the beam profile(Ophir)

Table3-1 Characteristics of GRIN lenses with various diameters

Fig.3-10 Beam diameters change of the collimated beams 

Fig.3-11 Light emitted from LC connector (a) with GRIN lens (b) without GRIN lens

Fig.3-12 Wavelength filter for coarse wavelength division and multiplexing (CWDM).

集積型GRINレンズの応用例として4チャネルのコリメート光の発生デバイスの紹介をします。GRINレンズの光線軌跡は屈折率分布係数、g値によって表されます。

前掲した光線軌跡のFig.3-3からわかるように、GRINレンズの光軸中心から点光源として入射した光はGRINレンズの長さが1/4ピッチの箇所で平行になり、2/4ピッチの箇所で焦点を結ぶことになります。

従って、4チャネルのキャピラリー型ファイバアレイと1/4ピッチの4チャネルの集積型GRINレンズを、ファイバコア中心とGRINレンズの光軸中心が一致するように接続すれば、GRINレンズの別の端面から4本の平行なコリメート光が出ていく事になります(Fig.3-5、Fig.3-6)。ファイバアレイと集積型GRINレンズの接続はUV接着剤または融着接続(Fusion splice)で固定されます。キャピラリー型ファイバアレイの直径と集積型GRINレンズの外側の直径はいずれも例えば1~2mm程度と非常に小さくすることが可能です。GRINレンズの直径は50μ~500μまで任意に変えることができます。

ここでは4チャネルの場合を示しましたが、8、12、16チャネルのi-GRINも提供できます。さらに3x3、4x4、8x8、12x12などの二次元集積化したものは開発中です。

このようにして形成されたコリメート光の進行方向に垂直面内での光の強度分布I(r,z)は一般に式(3)で表され、がガウシアンビームと呼ばれています。

I(r,z)=exp(-2*r22(z))   (3)

r=0における光強度が1/e2になる箇所の強度分布の広がりω(z)をガウシアンビームのスポットサイズ(spot size)と呼びます(Fig. 24)。またこのω(z)が光の進行方向に対して最小になるzの位置(ここでz=0とする)をビームウエスト(Beam waste)と呼び、この位置でのスポットサイズをω0(Beam waist size)と定義します。

このようなガウシアンビームの伝搬の様子をFig. 3-8に示しました。

ガウシアンビームの広がり角θは近似的に式(4)で表され、レンズから出射したコリメート光線はビームウエストの位置で一旦絞られ、その後角度θで広がっていきます。

θ=λ/(π*ω0*n)     (4)

実際にビームを観察した結果をFig. 3-9 (a),(b)に示しました。

Table3-1 およびFig.3-10に集積型GRINレンズの各種レンズサイズに対するBeam Waist位置とBeam waist sizeを示します。

(株)中原光電子研究所では、お客様のご要望によりGRINレンズのレンズ径とアレイ数はカスタム対応も可能です。

このようなコリメート光は各種の光部品に応用可能です。Fig.3-11はマルチモード光ファイバ先端にGRINレンズを融着してLCコネクタに実装したものです(a)。比較のためにGRINレンズ無しの光ファイバからの出射光線も示しましましたが(b)、GRINレンズにより出射光線はきれいにコリメートされていることが認められます。

光通信用で最も代表的な応用例としては4波や8波のCWDMフィルターがあります。誘電体多層膜をMUX/DEMUXのフィルターとして使用し、これと集積型GRINレンズを組み合わせればFig.3-12の部品の実現が期待されます。集積型GRINレンズを使用すれば、1波長毎にレンズ位置を調心して組み立てる必要が無いため生産性が上がり、振動や温度変化にも強く高信頼のモジュールの実現に寄与するでしょう。

同様なコンセプトで、これまで1波長毎または1信号チャネル毎にレンズ位置を調心して組み立ていた多くの部品を、集積型GRINレンズにより簡単にまとめてアレイ化することができます。例えば、レンズを前面に装着したシングルモード用のMTコネクタ、アレイ型BiDi (Bi-Directional Coupler)、アレイ型アイソレーアなどにも応用できます。

(株)中原光電子研究所では、集積型GRINレンズの販売のみでなく、お客様の要望をお聞きして集積型GRINレンズを使用した光部品の受託開発・商品化をいたします。詳しくはお問い合わせ下さい。

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3-3-2.シリコンフォトニクス用垂直結合部品への応用

(Fiber Arrays for Vertical Coupling of Silicon Waveguide)

Fig.3-13 Collimating-type straight-type low profile coupler (S-LPC) using a prism.

Fig.3-14 S-LPC with an angled fiber array.

Fig.3-15 S-LPC with an angled i-GRIN

Fig.3-16 Photograph of i-GRIN® and micro-prism for silicon photonics S-LPC

Fig.3-17 Optical output from the angled i-GRIN for S-LPC

Fig.3-18 Two-dimensional i-GRIN (3x3=9 lenses)

近年シリコン導波路を使用したシリコンフォトニクスが特にデータセンタにおいて盛んに用いられるようになっています。シリコンフォトニクスは将来の6G、自動運転、IoT、AIに欠かせない技術と考えられています。しかし、シリコン導波路と光ファイバを接続する技術は未だ未成熟であり、この事がシリコンフォトニクスの本格的な導入を妨げている要因の一つとなっています。シリコンの導波路は光のスポットサイズが1-3μと非常に小さいため、10μのスポットサイズを持つ通常の単一モードファイバ(single mode fiber)と接続することが困難です。

このため導波路上にグレーティング(Grating)を形成し光を導波路の上方に出射させてスポットサイズを広げ単一モードファイバとの接続を容易にする方法が解決策の一つとして注目されています。

しかし、通常の光ファイバアレイを用いた場合光ファイバは導波路の上方に伸びますから部品の厚さが厚くなり実装上問題となります。このため光ファイバを曲げてファイバアレイを作製する方法なども実施されていますが、光ファイバは曲げに弱いため破断しやすく損失増加、コストアップなどの問題も新たに発生しています。

(株)中原光電子研究所では光ファイバを曲げずに、光そのものを曲げて薄型のファイバアレイを考案しました(Straight-type Low Profile Coupler :S-LPC)。光ファイバは直線状のままですから、光ファイバの曲げによる破断や信頼性の劣化、損失増加は本質的に起こりません。また従来のV溝型ファイバアレイやキャピラリー型ファイバアレイがそのまま使用可能です。S-LPCの部品高さはわずか3mm程度が容易に達成できますが、1mmまたはそれ以下の高さの超薄型化も可能です。

以下の各種S-LPC構造はいずれも光学的シミュレーションによって低損失な特性を有する事が明らかになっています。

Figure3-13にGRINレンズを2枚使用したS-LPCの例を示します。この場合は、シリコンチップからの光はコリメートされて光ファイバに結合しますのでアラインメントが容易になります。

Figure3-14は端面を45度に角度研磨した通常のファイバアレイからの光を、直接GRINレンズを通してシリコンチップに結合させる例です。Figure 3-15はGRINレンズの端面を45度に角度研磨してシリコンチップに光結合させる例です。特にFig. 3-14とFig. 3-15に示すS-LPCは、構造が最も簡単でしかも超薄型(1mm程度またはそれ以下)の光結合部品を提供できるものと期待されます。

これらのS-LPCに使用する集積型GRINレンズ(i-GRIN®)とマイクロプリズムをFig.3-16に示します。

また4本の光ファイバから角度付きGRINレンズに入射した4本の出力光はFig.3-17により観察する事が出来ます。

さらに集積型GRINレンズは一次元の配列のみでなくFig. 3-18に示すように二次元の配列の可能です。二次元集積型GRINレンズと二次元キャピラリー型ファイバアレイを使用すればFig.3-19に示すファイバアレイが実現できるものと期待されます。

一般にはファイバアレイのピッチは光ファイバの外径125μm(または80μm)以下にすることはできません。しかし、Fig.3-19に示す二次元型配列を使用すればファイバアレイのピッチを任意に狭くする事が可能となります。これに呼応してシリコンチップの導波路間隔も狭くすればシリコンチップの幅がその分狭くなり狭面積化します。つまり二次元S-LPCはシリコンチップの経済化に寄与することになります。

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Fig.3-19 Two-dimensional S-LPC

3-3-3.マルチコアファイバ用Fan-out/Fan-inへの応用

(Application for fan-out/fan-in device of Multi-core fiber)

Fig.3-20 Ray trajectory of fan-out/fan-in component

マルチコアファイバ(Multi-Core Fiber: MCF)は1本のファイバで超大容量伝送が可能である特徴があります。さらに形状が丸くて細いためリボンファイバよりも機器内・機器間配線にも使いやすい特徴があります。しかしMCFの実用に際して解決すべき最大の課題は未だ実用的なそのfan-out/in部品が無い事です。

これについても集積型GRINレンズを使用すれば全く新しいコンセプトによってMCF用のfanout/in部品が可能になりますFigure3-20は集積型GRINレンズを用いたMCF用fan-out/in部品の光線軌跡を示したものです。GRINレンズの光軸に対してオフセットをかけて光を入射/出射させることによりfan-out/in作用を持たせることができます。Figure3-20ではMCFのコア間隔が40μmの場合これを125μ以上に広げた例を示しました。広がった側では125μのファイバを接続することができます。

3-3-4.VR眼鏡、網膜眼鏡への応用

(Application for fan-out/fan-in device of Multi-core fiber)

Fig.3-21 Ray trace of RGB combiner

VR用の眼鏡や網膜眼鏡(Retina glasses)では赤(R)、緑(G)、青(B)の光を結合するデバイスが必要になります。集積型GRINレンズを使用すればこのRGB結合器を実現することができます。Figure3-21にその構成と光線軌跡を示しました。まずRGBの光を集積型GRINレンズでコリメート光にして結合用のGRINに入射させます。RGB各光源の入射位置は、屈折率の波長依存性を考慮して結合用のGRINレンズの出射側端面で焦点を結ぶように設計されています。

集積型GRINレンズのRGB結合器は、光源とレンズとの結合や位置合わせが容易、小型、軽量、低損失、振動に強い、高信頼などの優れた特徴が期待されます。

3-3-5.脱炭素化に向けた部品への応用

Table.3-2 Global power generation and power usage in data centers

Table3-3 Percentage of power used by various equipment inside the data center
Ref. Calculated based on "2021 Data Center & Key Device Related Market Research," Fuji Chimera Research Institute 2021.

Fig.3-22 Conceptual diagram of ray trajectory of a lens in air and in a liquid

Fig.3-23 Development scenario of optical transceivers for immersion cooling

Fig.3-24 Verification experiment of optical transceiver (Type (c))
(at KDDI Oyama network center immersion cooling system)

近年データセンタの電力使用量は爆発的に増加しています。それはスマートフォンの普及、自動運転、IoTなどによる情報量の増大のみでなく、最近はAIの台頭によってAIチップのエネルギ消費量が膨大になりつつあることにも影響されています。Table3-2に世界の総発電量とデータセンタでの電力使用量の年推移予測を示します。2030年には世界の総発電量の9%をデータセンタが使用し、2050年には実にこれが32%に達します。

因みに、福島第一原子力発電所の1号機から6号機までの合計の発電量は年間41TWh(稼働率100%)、米国スリーマイル島の原子力発電所1号機、2号機の合計発電量は年間15.7TWh(稼働率100%)であり、2030年以降のデータセンタの電力使用量には遠く及びません。

Table3-3はデー¬タセンタ内部での各種機器の電力使用割合を示したものです。光伝送装置は全体のわずか5%しか電力を使用しておらず、光電融合デバイス(シリコンフォトニクス)等によって省エネ化を図っても効果は微少に留まるでしょう。Table.3-3から電力削減に対して最も効果的であるのは空調(冷却)のための電力を削減することであることがわかります。

このため、データセンタを北極圏や海底に設置する試みも行われましたが実用的ではなく成功していません。現在では空調によって機器を冷却するのではなく水冷や液浸によってサーバ、スイッチなどの各種機器を冷却する技術が注目されています。特に液浸法は、機器冷却のための電力を空調の94%も削減する効果があると算出されており脱炭素化に向けて最も期待されている技術です。

ところが液浸法には解決しなくてはならない重大な問題があります。液浸法ではサーバやスイッチ、光伝送装置類を全てオイルなどの冷媒中に浸漬します。電子機器や半導体などはオイル中に浸しても絶縁性は保たれ問題ないことが確認されていますが、レンズ・プリズなどを使用した光部品や光コネクタは冷媒の屈折率との関係で光学性能が大幅に変化してしまいます。光トランシーバは動作しなくなります。また光コネクタは一度脱着したらPC接続ができなくなり(PC接続:Physical Contact)接続損失や反射特性に悪影響が出て通信障害を引き起こす可能性が出てきます。

集積型GRINレンズはこれらの問題を解決することができる有力な部品です。

通常の球面レンズは空気と曲率を持つレンズの境界面で屈折をしてFig.3-22に示すように平行なビームを形成します。しかし、液体中においては液体の屈折率に応じて屈折角度が変わるため光線は平行ビームにはなりません。一方、GRINレンズにおいてはガラス内部の屈折率分布が通常のレンズの球面の役割をしているため、空気中でも液体中でも外部環境には影響されず光線は同じ軌跡を描き平行ビームを形成することができます。この現象は古くから知られていました(*)、(株)中原光電子研究所ではこれを光トランシーバや光コネクタに適用して光伝送装置をそのまま液浸に使用することを可能とする開発を進めています。

*:USP5738676 "Laser surgical probe for use in intraocular surgery" Apr.14, 1998

Figure3-23は液浸に適用可能な光トランシーバの各種の形態を示したものです。
現在普及している多くのプラガブル光トランシーバ(Fig.3-23-(a))はそのまま液体に浸けると、レンズ作用が変化して光トランシーバとして動作させることが出来ません。このため液浸用の光トランシーバとしてトランシーバの外側前面を樹脂でモールドしたAOC (Active Optical Cable)が使用されています(Fig.3-23-(b))。AOCはデータセンタのサーバやスイッチの液浸に使用する事は可能ですが、重大な解決すべき課題も残されています。それは全体が樹脂モールドされているために光コネクタと光トランシーバが分割できないことです。

これはメンテナンスの際に光ケーブルが付いたままの光トランシーバを着脱しなければならない事態をもたらします。特に数十から数百本の多くの光ケーブルがサーバやスイッチに束ねて取り付けられている場合にはメンテナンスの時間とコストは膨大なものになる可能性があります。これは液浸による冷却システム普及を妨げる障壁にもなっており、脱炭素化に向けて早急に解決すべき課題です。

Figure3-23-(c)はMPO光コネクタの端面にGRINレンズを取り付け、光トランシーバ内部の光学部分に液浸用媒体の侵入を防止するため樹脂モールドしたものです。MPOにGRINレンズを付けてビーム拡大することによって、コネクタの挿抜時に液体の汚れや、ゴミなどの混入、屈折率の変化などによる特性の劣化をふせぐことを狙ったものです。

KDDI株式会社では液浸冷却システムの商用化に向けた開発を行っており、2023年にサーバの冷却電力を94%削減し、PUE=1.02を達成しています(PUE: Power Usage Efficiency、データセンタ全体で使用する電力量をIT機器のみが使用する電力量で割った値、PUE=1.0が極限値、空調では1.9程度にもなる)。

(株)中原光電子研究所はこのタイプのトランシーバを試作し、2024年2月から5月の間、KDDI株式会社小山ネットワークセンターにてKDDI株式会社と共同で実際の液浸システムを使用した検証実験を行いました。

KDDI株式会社の液浸装置で、ARISTA, DELL, HP, CISCOのサーバやスイッチを、Fig.3-23の(c)の形態の光トランシーバ(マルチモードの100Gbps、12芯MPOコネクタインターフェース)でつなぎリンクすることを確認しました。次いで、光コネクタを液体中で挿抜し伝送状態にも変化が無いことも確認しました。Figure3-24に小山ネットワークセンターでの液浸装置を使用した検証状況を示します。

今後(株)中原光電子研究所では光トランシーバメーカとも協力し、光トランシーバ内部の光部品と光ファイバのインターフェースの箇所にも集積型GRINレンズを適用し(Fig.3-23-(d))、空気中でも液体中でも共通で使用できるプラガブル光トランシーバの実現を目指します。この技術は今後の光電融合デバイスにも適用可能であるため、シリコンフォトニクスやCPO(Co-Package Optics)を多用するオールフォトニックネットワークの構築にも貢献するものと期待されます。

It`s our job to be helpful for your product innovation.

(株)中原光電子研究所では、これまで述べた集積型GRINレンズを使用した応用製品の試作、受託開発を行っています。また、皆さまのアイデアの実現のために設計・試作を受託します。詳しくは下記までご連絡ください。

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以上述べた各種光技術の開発経緯についてご興味がある方は、光ファイバの製造技術(VAD法)、ファイバアレイ、集積型GRINレンズ開発の状況をNovelesqueに描いた著書『光ファイバ開発とヤマの記憶』(中原基博著、新潮社図書企画室、2023年8月出版)をご覧ください。

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